カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞した女優たち

ある過去の行方

カンヌ国際映画祭で注目された作品

名前だけなら映画ファン、業界に携わっている本業の人たちでなくても知られている『カンヌ国際映画祭』を取りあげるとする。恐らくだが、よほどのマニアやコアなファンでもなければ今映画祭について詳しく説明しろ、と要求された時のハードルの高さは底知れないでしょう。日本でも度々名前を耳にすることはあっても、詳細は知らないという人が殆どのはずだ。事実、筆者は映画を頻繁に見る人ではないため、知名度だけでこの映画祭が凄いという点だけしかあまり認識していない。その手の業界人に言わしめれば、なんて不届きなと罵られるかもしれませんが、知らないものを知っているふりをするほうが余計に質が悪いでしょう。

どうしてカンヌ国際映画祭がそこまで有名で、かつこの映画祭で賞を受賞した場合に注目されるのかというと、映画祭が開催される期間にもう一つとある催し物が開かれることにあった。それは『国際見本市』が開かれており、このマーケットも世界的に並び立つカンヌ国際映画祭並みに有名なマーケットだからだ。必然とメディアの関心や注目も集まりやすくなり、世界各地のマスメディアが集中して来日してくることから、映画祭も同じくらい注目度を浴びるのだ。だからこそ、世間ではレッドカーペットを歩く世界中の有名なスターたちが結集するのも露出が多いからこそだ。たまに日本人が訪れるという場面もありますが、海外のスターと比べるとオーラの違いが浮き彫りになって印象は薄いんですけどね。

こうした背景事情があるからこそカンヌ国際映画祭で出演した作品が注目を浴びれば、一躍スターダム街道へとまっしぐらも可能なわけだ。この映画祭ではパルムドール賞が一番有名ですが、個別に用意されている役者に向けられる賞も栄誉として注目される。今回はそんなカンヌ国際映画祭で用意されている『女優賞』をかつて受賞した『ベレニス・ベジョ』に注目したい。女優賞を獲得できた作品は『ある過去の行方』という、2013年に公開された映画作品がきっかけだ。

作品概要

ベレニス・ベジョがカンヌ国際映画祭で女優賞を獲得した2013年に、主演した映画『ある過去の行方』から彼女の名前が改めて世界中に響いた作品になります。以前から精力的に活動はしていたので、今更と思うでしょうが、それでも一生に一度受賞できるかどうかも分からない、名誉ある映画祭で個人名の受賞というのは歴史に名を残す快挙だ。それこそ今までの苦労などがすべて報われたような思いになると言えるので、良き作品に出会えたこと、自身の努力などを認められたと実感できることはとても良いことです。

栄光に満ち足りた映画賞の受賞は役者にとって喜ぶべきものと言っていいでしょう。映画祭の女優賞に受賞したというだけでも凄いですが、このある過去の行方という物語がどうしてここまで脚光を浴びたのでしょうか。ちなみにパルムドール賞にもノミネートされていましたが、受賞とはいかなかった。それでも女優賞は獲得していますので、作品が決して悪いわけではない。

では実際に今作がどのような物語になっているのか、まずは簡単にあらすじから見ていこう。

あらすじ

フランスに住むマリー=アンヌは前夫であるアフマドと別れてから4年が経過していた。現在は新しい恋人であるサミールと再婚寸前までの関係を深めている。マリーにはリュシーとレアという2人の娘、サミールにはフォアドという息子がおり、これから新生活が幕を開けようとしていたが、問題は残っている。いまだマリーはアフマドとの離婚が完全に成立していないことから、急遽イランへと帰国した彼をフランスに呼び戻す。

裁判所で離婚手続きを取る2人だが、そこでマリーはアフマドに1つ頼みごとをした。それは最近様子がおかしいリュシーと話をして、相談に乗って欲しいというもの。かつては自分の家だった場所に再びやってきたアフマドは、血こそ繋がっていないがリュシーとの会話をする。そこで彼女が再婚に対して否定的であること、もしするようなら家を出るとまで告げたのだ。

だが話を進めていく中でアフマドは何か奇妙な感覚にとらわれる。どうしてこの時期にマリーが自分を呼んだのか、サミールと先の妻との関係などが浮き彫りになる中で、それぞれが抱え込んでいたものが浮かび上がってくる。やがてそれらが紐解かれていく中で見えてくる真実、それらが明かされる時に彼ら全員が過去に引きずられていたことが明らかになるのだった。

サスペンス調の物語

ある離婚寸前の元夫婦、その妻だった女性が自国へ帰った夫をフランスに呼び寄せたことから物語は幕を開けます。改めて離婚手続きをする2人でしたが、マリーは最近どこか様子がおかしい娘のリュシーの相談に乗って欲しいと夫であるアフマドに頼み、リュシーを通して現在のマリーとその相手であるサミールとの関係などが紐解かれていきます。愛あっての結婚ではなく、愛を偽ることで本来受けなくてはならない痛みから目を背けようとしていた事実が明らかになってくるのだ。

そもそもただ離婚をしたいだけなら、サインをして送り返せばいいだけではないのかと、そういう話にもなってきます。それをしなかったのにはマリーにも理由があり、彼女が抱えているある1つの事実に直結していたからだ。そして物語の焦点が結末へといざなるための一本筋を導き出す事にもなる。これらの事実を明るみに出すために鍵を握っているのが、マリーの娘であるリュシーなのです。彼女もまたある秘密を抱えて苦しみ、そのことを父に吐露したことで物語はある事実を導き出すのです。

展開は

この物語はタイトルから見れば、結婚を待ち構えている2人が過去を邂逅して改めて愛を誓い合う、的な展開だと筆者は最初予想した。しかし実際は非常に濃密な人間ドラマが展開され、しかも物語が進んでいけばいくほどサスペンス調の物語になっていきます。しかしそうした内容も一重に、『愛あればこそ』という言葉で括れるのです。

そして愛があるからこそ、苦しみに耐え切れずに逃げ出したい、耐え切れないといった感情を吐露するきっかけにも繋がっていくのだった。何がそこまで彼らを困惑させたのか、その理由こそ愛という思いが強く響いていくのです。